静電気とは
静電気発生のメカニズム
静電気の発生原因と対策
静電気は一般にどのような場所でも発生します。発生原因はいろいろですが工業上問題となるのは剥離帯電と摩擦帯電で、それによって発生する誘導が主なトラブル原因になります。
- ①剥離帯電
- 重ね合った2つの物が剥離するときに発生します。イスから人が立ち上がる、シートをはがす等が代表的です。
- ②摩擦帯電
- 2つの物をこすると静電気が発生します。これが静電気のもっとも基本的な発生原因です。どちらがプラスになるのか、マイナスになるのかを実験的に求めた帯電列というものがあります。 大昔の実験結果によって帯電列が判明しており、上の列の離れている物体同士を摩擦すると、より強い静電気が発生します。
主な例として身近な現象では、洋服を脱ぐ、ベルトコンベヤ上でワークが滑る、シューターへ落下するときに物がこすれる、ミキサーで物を混ぜる、人間が歩く、車から降りる、などありとあらゆるところで発生します。
- ③他の帯電
- 粉砕帯電、流体の帯電、粉体の帯電、化学反応による帯電などがあります。
- ④導体の静電気による誘導
- 上着を脱いだときにドアノブに火花が飛ぶ、車から出るときにバチッとくる、ハードディスクのヘッドがそばの帯電物による誘導で破損する、樹脂のペレットを入れる金属容器に触れて火花が飛ぶなどがあります。絶縁物への帯電は一般的によく見る現象ですが、導体の誘導自体は静電気によってのみ起きるというわけではなく、電磁気学的に近くに電界があれば必ず起きる現象です。一般に誘導による静電気現象は目にすることが多いかと思います。人体は静電気の観点からみると(抵抗値から)導体と考えられるため誘導が発生します。
- 例えば、下記のようなものが挙げられます。(人体摩擦帯電モデル)
- 洋服(上着)を脱いだときに下着に発生した静電気は、そのまま人体に誘導します。誘導した電荷は人体にたまっていますので、ドアノブなどに触れたときにバチッとくることになります。
- 歩いているときに靴と床との摩擦でも同じように誘導が発生します。
- 乾いた布で体をこすったりするとやはり摩擦帯電により、人体に電荷が発生します。
人体に帯電した電荷が激しく変動するため、リストストラップなどの接地対策をしないとイオナイザでは除電しきれない場合があります。
静電気発生のメカニズム
半導体(工業製品)による静電気の発生例
同じことが工業製品の半導体などにも発生します。基板をハンドラでコンベヤから持ち上げる動作、ICをマウタでマウントするために持ち上げる動作など、物と物とが「はがれる」「こすれる」ことが発生すると、相手の物体が導体・絶縁物に関わらず、かならず静電気が発生します。
静電気が発生すると、導体が近くにあると誘導が発生し、他の金属などに触れると放電がおき、ノイズやICの破損などの障害が発生します。人体に帯電(誘導)した電荷は、ピンセットなどでワークに触れたときに放電を起こしてICやワークなど破損させます。
空気中に浮遊している塵などが空気との摩擦で帯電したり、走行中の車が空気との摩擦で帯電します。金属容器に樹脂のペレットを入れたときに誘導によって火花が飛ぶこともあります。
塗装工程などでは空気中の異物付着が問題となっています。これはワークが帯電している場合と、塵そのものが帯電している場合があり、どちらもイオナイザを導入することで改善することが可能です。
参考文献
- 静電気学会編:新版・静電気ハンドブック(オ-ム社 1998)
- 労働省産業安全研究所編:静電気安全指針,RIIS-TR-87-1(1988.3)
- 労働省産業安全研究所編:静電気用品構造基準,RIIS-TR-91-1(1991.7)